参考ページ
1.ホクレアとマイスで使われている航法技術についての詳しい解説は、以下のページをご覧下さい。
http://pvs.kcc.hawaii.edu/L2wayfind.html
2.ナヴィゲーターたちが使っているハワイ式のスター・コンパスはこちらです。
http://pvs.kcc.hawaii.edu/2007voyage/2007starcompass.html
マジュロまでの航法計画
クルーのカイウラニ・マーフィーが1月24日のホクレアからの報告で書いているように、航法計画は「北緯17度まではアイナ・コナ(西南西)を維持、その後コモハナ(西)に転針してジョンストン島を視認するまでこの針路を維持」というものです。
ジョンストン島は外洋で自分の位置を知る為の目印になります。ジョンストン島を目安にすることで、ナヴィゲーターたちはマジュロまでのより正確なコースを設定することが出来るのです。マジュロはジョンストン島から方位角で245度、すなわちアイナ・コナ(西南西)の方角に1262海里(2337 km)行った所にあります。
エクスパンデッド・ランドフォールについて
ナイノア・トンプソンは1月20日のプレス・リリース(「ホクレアとアリンガノ・マイスが出航」)の中で、次のように述べました。「ジョンストン環礁を発見するのは、干し草の山の中から一本の針を見つけ出すようなものです。ジョンストン環礁は極めて小さい島ですし島の高さも低い。し かも木は殆ど生えていません。ナヴィゲーターがジョンストン環礁を発見する上で最も重要となるのは、島に住んでいる海鳥たちです。・・・」
ナヴィゲーターたちが陸地を探す際に利用するのは、ノイオ(クロアジサシ)とマヌ・オ・ク(シロアジサシ)です。これらの鳥たちは朝、島から海に出て魚を捕り、夜にはまた島に帰って行きます。ノイオが島から離れるのは一般的に言って40マイル(64?)の範囲内、マヌ・オ・クが島から離れるのは同じく120マイル(192?)の範囲内です。
※これらの鳥たちの写真や、海鳥を利用する以外の陸地発見の方法については、以下のページをご覧下さい。
http://pvs.kcc.hawaii.edu/navigate/land.html
いざ島を見つけようとする時、ナヴィゲーターたちはまずアジサシたちを日出時と日没時に探します。もしも夜明けにアジサシを見つけられたなら、島はアジサシたちが飛んでくる方角のどこかにあります。もしも夕暮れ時にアジサシたちを見つけられたなら、島はアジサシたちが飛んでいく方角のどこかにあります。
ジョンストン島に営巣している鳥たちの存在を利用すれば、本来ならば長さ2マイル(3.2?)、幅1マイル(1.6?)にも満たないジョンストン島の大きさを、最大で直径240マイルもの円に拡張することが出来るのです。
※ジョンストン島の写真や各種の野生動物についての情報は、以下のページをご覧下さい。
http://www.fws.gov/pacificislands/wnwr/pjohnsnwr.html
アジサシ以外の鳥たちは、島を見つけ出す際にはさほど有力な手がかりになりません。アジサシ以外の鳥たちは1日以上も空を飛び回っていたり、海上で夜を明かしたりすることが少なくないのです。ある種の海鳥などは、その生涯の大半を海の上で過ごすほどです。
ナヴィゲーターたちが首尾良くジョンストン環礁を発見出来なかった場合の選択肢は、ジグザグに帆走してジョンストン環礁を探し続けるか、あるいはそのままマジュロを目指すかの2つです(航法器具を使用しないナヴィゲーションでは、確実性よりも戦略性が重要なのです。インターネットで船団の航跡を追っている私たちは、GPSの信号を利用して船団の位置を正確に把握することが出来ますが、ナヴィゲーターやクルーはそうした情報を知らないままなのです。彼らに判るのは、島が近いかどうかということだけです。彼らはそれまでに進んだ距離や進んだ方角の推算、夜空の観察、大気の観察、海の観察などを通して、それを知ることが出来るのです)。
マジュロは比較的近距離で隣り合っている環礁群の一部です。これらの環礁群はマーシャル諸島と呼ばれ、経度にして東西に10度、南東から北西の方角に600海里に渡って連なっています。ハワイやジョンストン環礁から見ると、アイナ・コナ(西南西)の方角にあります。船団がジョンストン環礁を視認出来なかった場合でも、ジョンストン環礁付近から西南西に向かって航海を続ければ、マーシャル諸島のどこかには辿り着くのです(ナヴィゲーターにとってマーシャル諸島に含まれるそれぞれの環礁は、そこに住んでいるアジサシたちによって大幅に拡張されて存在しているのです)。船団はマーシャル諸島に差し掛かってから、改めてマジュロに向かうことになりますが、マーシャル諸島内ではマジュロに近づくに従って、島と島の距離は近くなっていきます。
天体
ナヴィゲーターたちは天体を利用してカヌーを導いていきます。彼らが主に利用するのは太陽、月、ホクパア(北極星)、ホクロア(金星)です。これらの天体が水平線の近くにある時には、方角を知る為の目印として利用出来ます。例えばこの季節の太陽はアイナ・マラナイ(東南東)から上ってアイナ・コナ(西南西)に沈みます(日出と日没の位置は毎日少しずつ北に移動して行きます。3月22日の春分の日には、太陽は正確にヒキナ(東)から上り、正確にコモハナ(西)に沈むのです)。
この季節に西南西を目指すのであれば、太陽が沈もうとしている時間帯に真っ直ぐ太陽の方角に船を向けてやれば良いのです。
ホクロア(金星)は太陽の後を追って空を動き、日没の1時間半後に水平線に沈んでいきます。ホクロアが沈むのはラ・コナ(西微南)のハウス[訳注1]です。西南西の針路を維持していれば、ホクロアは船首の右側の1つ目のハウスに沈んでいくはずです。
月もまた東から上って西に沈みますが、厳密な月出と月没の位置は毎晩変化しますし、月出や月没の時刻も月の満ち欠けとともに変化しています。日がある間に上ってくる月は、他の天体が見えない時に方角を知る為の目安としては充分に役に立ちます。
ホクパア(北極星)は天の北極のすぐ近くにあります。つまり北半球では夜間、ホクパアは常に見えているのです。ですからホクパアは、北がどちらかを知る為の確固たる目印になります。西を目指している間、ホクパアは常にカヌーの右手に見えています。ホクパアを利用して西南西の針路を維持する際には、ホクパアを右舷の中央から見て2つ後ろのハウスに置いてやれば良いのです。
ホクパアの高さもまた、緯度を知る為の手がかりになります。北緯17度においては、ホクパアは水平線の上17度の所に見えるのです。ナヴィゲーターは伸ばした手を利用して、天体の高さを測ります。ナヴィゲーターは、自分の手のどの部分が天体の何度の高さに対応しているかを知っているのです。
ハナイアカマラマ(南十字星)は、早朝、太陽が昇ってくる直前に直立します。その根本は真南を指し示しています。ハナイアカマラマが天の子午線[訳注2]を通過する時の高さもまた、緯度を知る為の手がかりになります。北緯17度においては、ハナイアカマラマの根元の星は水平線の上9度の所に見えます。
竜骨座のミアプラシダスが、真夜中の直後に天の子午線を通過しました。この時のミアプラシダスの高さは3度。テュライス(竜骨座イオタ星、日本ではアスピディケの呼称の方が一般的)とスハイル(ここでは帆座のラムダ星)はその真上にあって、この3つの星を結んだ線は、水平線に対し直立しています(1月28日のホクレアのクルーの報告を見てください)。
ナヴィゲーターたちは方角や緯度を知る為の手がかりとして、その季節や緯度で利用出来る星ならば全て利用しています。例えばこの季節、ホクレア(アルクツルス)は午後11時にアイナ・コオラウ(東北東)から上ってきますし、アア(シリウス)は午前3時頃にアイナ・コナ(西南西)に沈みます。
全天でも最も明るい星々の上る位置については、以下のページをご覧になって下さい(沈む位置は上る位置とは空を挟んで反対側の、同じ名前のハウスです。スター・コンパスの北東の象限から上った星は北西の象限に沈み、南東の象限から上った星は南西の象限に沈みます)。
http://pvs.kcc.hawaii.edu/navigate/BrightStars.html
日出と日没時、ナヴィゲーターたちは航海カヌーを太陽に真っ直ぐに向けて、カヌーの向きを目安にして、うねりが来ている方角はどちらかを観察します。貿易風波は東の方から来ます。このうねりは日出の位置より若干北からやって来て、日没の位置より若干南の方角へと向かいます。昼間、ナヴィゲーターたちはうねりの影響を受けた航海カヌーの揺れ方で方角を判断し、針路を維持します。星が見えない夜にもこの技術は用いられます。
オンライン・プラネタリウム
この季節に見ることが出来る明るい星はどれか、それらの星々はいつ頃上ってきて、いつ頃沈んでいくのか、それはどの方角なのかといったことを調べるのであれば、次のウェブサイトを利用すると良いでしょう[訳注3]。
http://skytonight.com
訳注1:ハワイ式のスター・コンパスでは水平線を32分割し、分割されたそれぞれをハウスと呼んでいる。1つのハウスに含まれる方位角は11.25度である。
訳注2:天の北極と天の南極を結ぶ仮想の直線。必ず観測者の頭上を通る。
訳注3:このウェブサイトは英語です。日本語のオンライン・プラネタリウムとしては次のウェブサイトが便利です。現在の船団の位置(北緯17度付近、西経156度付近)を入力すれば、ホクレアの船上から見えるのと同じ夜空を見ることが出来ます。
http://www.stellatheater.com/